まだ詳しくわからないけども、どうやら宇宙の未来を決定づける大きな要因として、宇宙が「物質が優勢」か「エネルギーが優勢」かで変わってくるらしい。
前回は物質が優勢なときどうなるかを計算した。
宇宙が広がる速さを示すハッブル定数(定数と書いてあるが、実際は時間経過などで変化する変数である)が
$$H=\frac{2}{3t}$$
となり、宇宙は一生広がり続けるけども、そのスピードはどんどん遅くなる(速さがマイナスになって縮小することはない)という結果になった。
宇宙の大きさ的なものを示すスケール因子\(a\)の時間変化は
$$a(t)=\left(\frac{t}{t_0}\right)^{\frac{2}{3}}$$
という結果が出た。
そこで今回は宇宙にエネルギーが優勢となったときどんな結末になるのか計算してみよう。エネルギーと言っているが、英語では表記がRadiationとなっている。単純なエネルギーと考えるより、そこから放出されているものとしてイメージしたほうがいいのかもしれないが、この細かいところはまだまだ勉強不足である。
光の粒子である光子が動くということは運動エネルギーがあるということで、それは圧力\(P\)を引き起こす。だから今回は物質優勢の時に使った\(P=0\)という設定ではなく、エネルギーが引き起こす圧力\(P=\frac{\rho c^2}{3}\)を使う。(これの導出に関しては後日やろう)
圧力の値が変わってもやることは前回のときと同じである。
\(P=\frac{\rho c^2}{3}\)をFluid Equation \(\dot{\rho}+3\frac{\dot{a}}{a}\bigg(\rho + \frac{P}{c^2}\bigg)=0\) に代入すると
$$\dot{\rho}+4\frac{\dot{a}}{a}\rho=0$$
が得られる。
ライプニッツ記法\((\frac{dx}{dt}\))に変換すると
$$\frac{d\rho}{dt}+\frac{4}{a}\rho\frac{da}{dt}=0$$
$$\frac{d\rho}{\rho}=-\frac{4}{a}da$$
両辺を積分する
$$\int \frac{d\rho}{\rho}=-4\int\frac{da}{a}$$
ここから積分定数\(C\)はどんな操作を加えても\(C\)のままとする
$$\ln{\rho}=-4 \ln{a}+C$$
$$\ln{\rho}=\ln{a^{-4}}+C$$
$$\ln{\frac{\rho}{a^{-4}}}=C$$
つまり
$$\rho=\frac{C}{a^4}$$
$$\rho \propto \frac{1}{a^4}$$
なので宇宙の密度は現時点での密度を\(\rho_0\)と置くことで
$$\rho=\frac{\rho_0}{a^4}$$
とできる。これと宇宙の時空間のゆがみが無い\(K=0\)という設定をフリードマン方程式\(\left( \frac{\dot{a}}{a} \right)^2 = \frac{8\pi G}{3} \rho -\frac{Kc^2}{a^2}\)に加えると
$$\left( \frac{\dot{a}}{a} \right)^2 = \frac{8\pi G}{3} \frac{\rho_0}{a^4} $$
$$\dot{a}^2=\frac{8 \pi G}{3}\left(\frac{\rho_0}{a^2}\right)$$
\(\frac{8 \pi G \rho_0}{3}\)は定数なので\(A\)と置く。ここでもさっきの積分定数\(C\)のように、どんな操作を加えても定数である限り\(A\)は\(A\)のままで表記する。さらにライプニッツ表記に直すと
$$\bigg(\frac{da}{dt}\bigg)^2=A\frac{1}{a^2}$$
$$\frac{da}{dt}=A\frac{1}{a}$$
これを積分すると、結果として
$$a=At^{\frac{1}{2}}+C$$
という結果になるはずだ。ということは
$$a\propto t^{\frac{1}{2}}$$
である。これを現時点でのスケール因子\(a=1\)とするために、現在時間\(t_0\)を使って
$$a(t)=\left(\frac{t}{t_0}\right)^{\frac{1}{2}}$$
とする。これがエネルギー優勢な(シンプルな)宇宙の方程式の解である。
物質が優勢なときは、\(a_{(t)}=(\frac{t}{t_0})^{\frac{2}{3}}\)だった。これと比べるとエネルギーが優勢な宇宙のサイズ(スケール因子)の広がりはゆっくりである。
この結果から言えることは、物質が優勢な宇宙はエネルギーが優勢な宇宙より速く広がるということである。できるだけシンプルな状況を仮定しての検証だから、現実世界の宇宙の様子とはかけ離れてるのかもしれないけど、なんとか宇宙モデルの方程式を解くことができた。
次はもう少し複雑な状況をモデルにして解いてみよう。
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